S高原から
平田オリザの戯曲、「ニセS高原から」を観にいく。
この手の芝居は久しぶり。
エコノミー症候群になりそうなくらい
すし詰め状態の客席をしりめに、
芝居が始まったことをかんじさせないまま
すーっと客を巻き込んでいく。
サナトリウムが舞台のこの芝居は
入院患者とそこに務める病院の人間と
面会人らで話が進行していく。
病院内という暗さや息苦しさは全く感じられない。
芝居をしているという嘘の現実感も削除されている所為か、
客たちもサナトリウム内にいる錯覚さえ感じさせられてしまう。
結論という結論も観る側に任せられ、
約1時間半の芝居が終わった。
押し付けがましさのかけらも無い演出は、
私にとって、心地よい体のほぐれ方を与えてくれたらしく、
こんな優しい芝居もあるんだという安堵感を覚えた。
ただ、観終わって、バッグに入れておいたコーラがこぼれ、
手帳や財布が、あまーい香りを漂わせていることに気付くのが
劇場を出てバッグからポタポタ雫が垂れ出してからだったので、
ヘンゼルとグレーテルの道しるべのようで、ちょっと恥ずかしかった。
不思議と、ぶつけどころの無い怒りが沸かなかったのは、
こんな芝居を観たあとだからだと思う。
結構深刻で、現実的な題材なのに、優しい気持ちになったのは
私だけ?
知り合いの女優さんが出ていたので、お気に入りのネーム入りの
犬の縫い取りがあるタオルハンカチをプレゼントしたんだけど、
彼女の役は犬嫌いの恋人の役でした。
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