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2005年9月25日 (日)

S高原から

平田オリザの戯曲、「ニセS高原から」を観にいく。

この手の芝居は久しぶり。

エコノミー症候群になりそうなくらい

すし詰め状態の客席をしりめに、

芝居が始まったことをかんじさせないまま

すーっと客を巻き込んでいく。

サナトリウムが舞台のこの芝居は

入院患者とそこに務める病院の人間と

面会人らで話が進行していく。

病院内という暗さや息苦しさは全く感じられない。

芝居をしているという嘘の現実感も削除されている所為か、

客たちもサナトリウム内にいる錯覚さえ感じさせられてしまう。

結論という結論も観る側に任せられ、

約1時間半の芝居が終わった。

押し付けがましさのかけらも無い演出は、

私にとって、心地よい体のほぐれ方を与えてくれたらしく、

こんな優しい芝居もあるんだという安堵感を覚えた。

ただ、観終わって、バッグに入れておいたコーラがこぼれ、

手帳や財布が、あまーい香りを漂わせていることに気付くのが

劇場を出てバッグからポタポタ雫が垂れ出してからだったので、

ヘンゼルとグレーテルの道しるべのようで、ちょっと恥ずかしかった。

不思議と、ぶつけどころの無い怒りが沸かなかったのは、

こんな芝居を観たあとだからだと思う。

結構深刻で、現実的な題材なのに、優しい気持ちになったのは

私だけ?

知り合いの女優さんが出ていたので、お気に入りのネーム入りの

犬の縫い取りがあるタオルハンカチをプレゼントしたんだけど、

彼女の役は犬嫌いの恋人の役でした。

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